株式併合
株式併合とは複数の株式を1株に統合することです。
株式併合における注意点
株式併合をした場合、発行済株式総数が減少します。公開会社では発行可能株式総数が発行済株式総数を超えてはいけないというルールがあります。もし発行可能株式総数が発行済株式総数を超えた場合、通常なら、議題を「株式併合」と「発行可能株式総数の定款変更」の2つに分け株主総会特別決議を開催しなければなりませんが、株式併合において発行可能株式総数を変更する場合は、「株式併合」の議題の中で発行可能株式総数の変更も取り扱われます(株式併合の効力発生日に発行可能株式総数について定款変更したものとみなされます)。一方、非公開会社では4倍ルールは適用されません。
株式併合のメリット
- 株価の上昇
例えば、2株を1株に併合した場合、単純に株式の価値は2倍になります。 - 株主に対する管理コスト削減
- 少数株主を追い出す(スクイーズアウト)
例えば、10株を1株に併合する場合、10株未満の株主は金銭交付により追い出されます。
株主併合の決議機関と内容
株式併合のメリットでも示したように、株式併合は少数株主を金銭交付をもって追い出す可能性があります。ある株主に対する金銭交付は株主平等原則に違反する可能性があるため、決議はより厳しい株主総会特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上による賛成多数を要します)になります。
株主総会における株主総会特別決議
- 併合の割合(種類株式の場合、併合する種類株式の割合)
- 効力発生日
- 効力発生日における発行可能株式総数
ある種類の株主総会特別決議を省略できる場合
種類株式発行会社において、A種類の株式100株を1株に併合した場合、開催される決議は、まず株主総会特別決議であり、次にA種類の株式を持つ株主からなるA種類株主総会特別決議です。しかし、定款に「322条2項に規定する種類株主総会に関する定め」がA種類株式に設けられている場合、A種類株主総会特別決議を省略できます。322条2項の規定がない場合は、種類株主総会特別決議がなければ効力が生じません。
株主への通知・広告
会社は株主総会の決定事項について効力発生日の2週間前までに通知・広告をする必要があります。株券発行会社においいては、株券提供広告の通知を1カ月前に行う必要があります。
株主併合により株式に端数が発生する場合
例えば、会社が5株を1株に併合する場合、4株を有していた株主は排除されてしまいます。株主は買い増しをするか、株式を会社に買い取ってもらう必要があります(株式買取請求)。株式買取請求を行う場合、株主は①株式併合決議において反対する、②議決権を行使できない(無議決権株式)のいずれかの要件を満たしている必要があります。
株式買取請求における会社と株主のアクション
会社は、株主に対し効力発生日の20日前までに株式買取請求ができることを通知します。株主は効力発生日の20日前から前日までに株式の買い取りを会社に請求します。その際、買い取ってもらう株式数を知らせ、株券を持っている場合は株券の提出も行います。
買い取ってもらう株式の価格
買取請求の対象になった株式は、会社に買い取ってもらいます。株主と会社間で価格について合意があれば、効力発生日から60日以内に金銭の支払いを行います。効力発生日から30日以内に合意に至らないときは、その後30日以内に裁判所に価格決定の申立てをすることができます。
メモ
スクイーズアウトの共通ルール
(全部取得条項付種類株式・特別支配株主による株式売渡請求・株式併合のそれぞれで以下のルールがあります)
全部取得条項付種類株式
- 全部取得条項付種類株式の取得対価等に関する書面等の備え置き及び閲覧等(株主に対する情報開示;事前開示と事後開示)
- 全部取得条項付種類株式の取得をやめることの請求(差し止め請求;株主が不利益を被るおそれのある場合、株主が会社に対して請求できる)
- 株主の取得対価決定の申立て(価格に不服がある場合、裁判所に価格決定の申立てができる)
特別支配株主による株式売渡請求
- 株式等売渡請求に関する書面等の備え置き及び閲覧等(株主に対する情報開示;事前開示と事後開示)
- 売渡株式等の取得をやめることの請求(差し止め請求;売渡株主が不利益を被るおそれのある場合、売渡株主が特別支配株主に対して請求できる)
- 売買価決定の申立て(価格に不服がある場合、裁判所に価格決定の申立てができる)
株式併合
- 株式併合に関する書面等の備え置き及び閲覧等(株主に対する情報開示;事前開示と事後開示)
- 株式併合をやめることの請求(差し止め請求;株主が不利益を被るおそれのある場合、株主が会社に対して請求できる)
- 株式価決定の申立て(価格に不服がある場合、裁判所に価格決定の申立てができる)