会社法

社債

社債

社債とは、投資家などから資金提供を受ける代わりに満期まで利子を支払い、満期には元本を返済する有価証券のことを言います。つまり資金調達の方法の一つになります。この社債は株式会社だけでなく全ての会社が発行できます。

 

ポイント

株式・・・払い込まれた金銭を返さなくてよい自己資本としての資金調達方法(出資金)

社債・・・払い込まれた金銭を返す必要のある他人資本としての資金調達方法(借入金)

  • 純資産において株式は増加しますが、社債は変化しません。
  • 議決権など経営参加において株式は権利が与えられますが、社債は与えられません。
  • 投下資本の回収において株式はできませんが、社債は利息に加え、償還期限が来れば全額返還されます。
  • 会社解散後において株式は残余財産の分配を受け、社債は残余財産の分配前に通常の債権者と同順位で弁済を受けます。

 

募集社債の発行

募集社債とは、募集に応じて社債の引き受けの申し込みをした人に対して割り当てる社債のことを言います(複数の会社が合同で募集社債を発行することができます)。

 

募集社債の発行手順

step
1
募集事項の決定

募集社債の決定機関

  • 取締役会非設置会社は、取締役の決定または複数いる場合は取締役の過半数をもって決定します(定款に別段の定めがある場合を除く)。
  • 取締役会設置会社は、取締役会の決議で決定します(監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除く)。
    ※募集社債の総額その他社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項についての決定を取締役に委任することはできません。
  • 指名委員会等設置会社は、原則、取締役が決定しますが、その決議により重要な事項の決定を執行役に委任することができます。
  • 監査等委員会設置会社は、取締役の過半数が社外取締役の場合は、その決議により重要な事項の決定を取締役に委任することができ、また取締役会の決議により重要な事項の決定を取締役に委任することができる旨を定款で定めることができます。

募集社債の内容についての決定実行

  1. 募集社債の総額
  2. 各募集社債の金額
  3. 募集社債の利率
  4. 募集社債の償還の方法および期限
  5. 利息支払の方法および期限
  6. 社債権を発行する場合はその旨
  7. 各募集社債の払込金額もしくはその最低金額またはこれらの算定方法
  8. 募集社債と引き換えにする金銭の払い込みの期日

step
2
引き受けを申し込みしようとする人に対する通知

問い合わせがあった人に対し詳細事項を通知します。通知する内容は、会社の商号や上記募集内容の決定事項などになります。

step
3
募集社債の引き受けの申し込み

募集に応じて社債の引き受けの申し込みをする人は以下の事項を記載した書面を会社に交付します。

  • 申し込みをする者の氏名または名称および住所
  • 引き受けようとする募集社債の金額および金額ごとの数
  • 会社が最低金額を定めた場合は、希望する払い込み金額

step
4
募集社債の割当

割当事由の原則が働きます。この割当をもって効力が生じます

※株式の場合と同様、総額引き受け契約を締結できます。この場合、上記のステップ1から4の規定は適用されません。

 

社債の払込

社債の払い込みについては、募集株式の発行等の場合と異なり、相殺禁止の規定はありません。

 

社債の権利

社債権者は期限が到来するまで利息を受け、期限到来時に償還を受けることができます。社債の償還請求権の消滅時効は、行使することができる時から10年であり、利息の支払い請求権の消滅時効は5年です。

 

社債権

社債権は社債契約の権利を表章する有価証券で、社債発行会社は、社債券を発行する旨の定めがある社債を発行した日後遅滞なく社債券を発行する必要があります。また発行後遅滞なく社債原簿を作成する必要があります。

 

社債の譲渡と質入れの対抗要件

社債の譲渡

  • 社債券を発行する定めがない場合、第三者と会社への対抗要件は社債原簿の名義書き換えになります。
  • 記名社債券を発行する定めがある場合、第三者への対抗要件は社債券の占有、会社への対抗要件は社債原簿の名義書き換えになります。
  • 無記名社債の場合、第三者と会社への対抗要件は社債券の占有になります。

社債の質入れ

  • 社債券を発行する定めがない場合、第三者と会社への対抗要件は、社債原簿への氏名等の記載又は記録になります。
  • 社債券を発行する定めがある場合、第三者と会社への対抗要件は、社債券の占有になります。

 

社債管理者

社債管理者とは、社債権者のための利益代表として社債の管理を行う会社(銀行または信託銀行)のことです。ただし、①各社債の金額が1億円以上の場合、あるいは②社債権者が50人未満の場合は社債管理者を定める必要はありません。

 

社債管理者の権限

社債管理者は以下の権限を有します。

  • 社債権者のために社債に係る債権の弁済を受け、または社債に係る債権の実現を保全するために必要な一切の裁判上または裁判外の行為をすること
  • 裁判所の許可を得て行う、社債発行会社の業務および財産の状況の調査
  • 社債権者集会の招集
  • 社債権者集会の決議の執行

社債権者集会を要する場合

社債管理者は、以下の行為をするときは社債権者集会の特別決議を要します。

  • 社債の全部についてするその支払いの猶予、その債務の不履行によって生じた責任の免除または和解
  • 社債の全部についてする訴訟行為または破産手続、再生手続、更正手続、特別清算に関する手続など

※社債権者集会の決議事項は、会社法が定めたもの及び社債権者の利害に関する事項に限られています。決議が効力を発生するには裁判所の認可を要します。

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