自己株式の取得
原則、自己株式を取得することは禁止されていますが、いくつか例外があります。
自己株式の取得
- 取得条項付株式の取得(取得事由発生による取得)
- 譲渡制限株式の取得(不承認の株式を会社が買い取る)
- 取得請求権付株式の取得(株主により取得請求される)
- 全部取得条項付種類株式の取得
- 単元未満株式の買取請求
- 所在不明株式の買取り
- 端数処理手続きにおける買取
- 合併消滅あるいは吸収分割会社からの株式の承継
- 自己株式を無償で会社に譲渡
- 合意による自己株の取得
資本の維持(財源規制)
自己株式の取得に伴う株主への対価(金銭)は分配可能額(剰余金)を超えてはいけません。
合意による自己株式の取得
自己株式の取得は、自社の株価を上げたいなどの理由により行われます(財源規制がないことが前提です)
市場取引により取得してくる場合
決議機関は株主総会普通決議、取締役会設置会社においては定款の定めにより取締役会の決議になります。決議内容は、①取得する株式数(種類株式発行会社では株式の種類及び数)、②対価としての金銭の総額、③取得期間(1年以内)になります。承認後、代表取締役など業務執行者が市場から購入します。
子会社から取得する場合
子会社から株式を取得する場合については、以下に書かれています。
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株式譲渡と自己株式の取得制限
株式の譲渡 会社法127条は、株主は原則、自由に株式を譲渡できると規定しています(株式譲渡自由の原則)。従って、株主は株式を購入した際に会社に投下した資本を他者に売ることで回収することが可能になります ...
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決議機関は株主総会普通決議、取締役会設置会社においては取締役会の決議(定款に定めなくても良い)になります。決議内容は、①取得する株式数(種類株式発行会社では株式の種類及び数)、②対価としての金銭の総額、③取得期間(1年以内)になります。承認後、代表取締役など業務執行者が子会社から購入します。
自己株式の取得
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1取得株式に対する総額や総数を決定
決議機関は株主総会普通決議、取締役会設置会社においては定款の定めにより取締役会の決議になります。決議内容は、①取得する株式数(種類株式発行会社では株式の種類及び数)、②対価としての金銭の総額、③取得期間(1年以内)になります。承認後、具体的取得事項を以下の決議機関で決めます。
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2step1の範囲内において今回取得する株式の総額や総数の決定
取締役会非設置会社では取締役(過半数一致)、取締役会設置会社では取締役会の決議で具体的取得事項を決めます。内容は、①取得する株式数(種類株式発行会社では株式の種類及び数)、②1株あたりの単価と算定方法、③対価としての金銭の総額、④株式の譲り渡しの申し込み期日になります。
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3step2の内容を全株主へ通知
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2株主からの譲渡の申し込み
※上場企業もこの方法を使うことができますが、市場から購入する方がコストもかからないので、普通は使用しません。
特定株主を対象にした自己株式の取得
会社は、事前に特定株主と事前に株式数や金銭等について相談し、本人へ通知しています。さらに株主平等原則に則って他の株主にも通知しています。
特定の株主とは、例えば自社株を多く保有する筆頭株主になります。しかし筆頭株主のみからの自社株式の購入は株主平等原則に抵触する可能性があるため、決議機関はより厳しい株主総会特別決議を要します。決議内容は、①取得する株式数(種類株式発行会社では株式の種類及び数)、②対価としての金銭の総額、③取得期間(1年以内)、④対象株主の氏名になります。当然、この対象となる株主の議決権は認められません。
通知を受けた特定株主以外の他の株主が買い取りを望むなら、株主総会特別決議の前に会社に申し出ることができます(売主追加請求)。
売主追加請求権の排除
売主追加請求権は、定款に記載することによって排除することが可能です。ただし、会社設立後など新たに売主追加請求権を排除する旨を定款に定める場合は、総株主の同意が必要となります。
売主追加請求が認められない場合
- 上場会社が特定株主と相対取引をする場合で、購入価格が市場価格を超えないとき
- 非公開会社において、相続人から株式を買取る場合
- 定款に定められている場合
その他の自己株式の取得
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取得請求、取得条項、全部取得条項付株式
取得請求権付株式 取得請求権付株式とは、株主が会社に対して株式の買い取りを請求できる権利が付いた株式のことです。 請求により生じること 株式の取得 会社は株主から請求があった日に株式を取 ...
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