新株予約権とは
新株予約権とは、発行した会社に対して使用することで当該会社の株式の交付を受けれる権利のことをいいます。
新株予約権発行の流れ
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1甲株式会社が新株予約権を発行
Aさんは、新株予約権者Aとなります。新株予約権者になるためには金銭の支払や無償の場合があります。
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2甲株式会社に対し新株予約権を行使
新株予約権者Aはこの予約権を行使します。この際、行使時に決められた金銭を支払います。
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3甲株式会社による株式発行あるいは自己株の移転
株式がAさんに移転することにより、Aは新株予約権者から株主になります。
新株予約権の使い方
- 資金調達
社外向け(既存株主や投資家など)に金融商品として売りに出します。例えば、将来6000円を払い込めば一株を発行してもらえる新株予約権を4000円で売りに出します。新株予約権者は将来6000円を払い込めば、いつでも株を取得でき、株価上昇により合計出資額の1万円よりも高くなれば投資家の利益になります。会社にとっては豊富な資金調達を可能にしてくれます。 - ストックオプション(社内向け)
会社の従業員や取締役に無償で一株式の発行を受けれる権利を与えます。株式を発行する時に決められた金額を払い込む必要がありますが、株価上昇により多くの利益を出すために社員が努力しますし、有能な社員の流出を抑えることもできます。 - 買収防衛策(ポイズンピル)
敵対的買収に備え、新株予約権を友好関係のある株主に発行しておきます。会社は自社株の過半数(51%)を敵対企業に持たれる前に、新株予約権を行使し、敵対企業の株式占有率を低下させ、買収を防ぎます。※発行済株式総数を下げる必要があるため、新たに株式を発行する必要があります。
新株予約権発行の2つの方法
新株予約権も募集株式同様、株主割当と第三者割当の2つの方法があります。また、新株予約権の発行手続きは募集株式の発行手続きに準じています。
募集新株予約権における株主割当
株主割当における決議機関
- 非公開会社・・・株主総会特別決議(定款の定めにより取締役または取締役会決議にすることができます)
- 公開会社・・・取締役会決議
※募集株式と同じです。
株主割当における決定事項
- 募集新株予約権の内容と数(種類株式発行会社においては募集株式の種類および数)
内容については、既発行の株式であれば定款や登記記録にどんな内容なのか記載されていますが、新たに発行する新株予約権については内容がありません。つまり、募集事項決定時にどんな内容にするのかを決めることができます。 - 募集新株予約権の引換えに金銭の払い込みを要しない場合はその旨
- 有償の場合は、新株予約権の払込金額またはその算定方法
- 募集新株予約権を割り当てる日(割当日)
- 募集新株予約権と引き換えにする金銭の払い込み期日
ただし、募集株式の発行とは異なり、払い込み期日を定めなくても良い。その場合は行使期間の初日の前日が払い込み期日となります。 - 株主割当である旨
- 申込期日
新株予約権の内容
新株予約権の内容
- 新株予約権の行使により発行される株式の数またはその数の算定方法(種類株式発行会社にあっては発行される株式の種類およびその種類ごとの数)
※例えば、新株予約権の行使により、1新株予約権につき発行する株式を1株と決めることもできるし、10株と決めることもできます。 - 新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法
新株発行の際の払込金額(権利行使価格)に相当します。また、金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額を定めます。その際、例外を除いて検査役の調査が必要になります(募集株式の発行と同じ)。 - 新株予約権を行使することができる期間
例えば、10年など。 - 資本金、準備金に関する事項
新株予約権行使の際、財産が出資されるため、全額を資本金に組み入れるかどうかを定める必要があります。 - 譲渡制限新株予約権とするときはその旨
譲渡制限株式とは異なり、会社が譲渡を承認しない場合の買い取り請求がありません。 - 取得条項付新株予約権とするときはその旨並びに対価
一定の事由が生じたときに会社が取得します。対価として、株式、社債、別の種類の新株予約権、新株予約権付社債、その他財産が支払われます。 - 新株予約権行使時に一株に満たない端数が生じる場合は、これを切り捨てる旨
- 新株予約権について新株予約権付証券を発行するときは、その旨
新株予約権について、有価証券たる新株予約権証券を発行することができます(株券とは異なり定款に規定されていないので、毎回、自由に決めることができる)。証券発行新株予約権を発行後、遅滞なく新株予約権証券を発行します。ただし、公開・非公開ともに会社は新株予約権者から請求があるときまで、新株予約権証券を発行しないことができる。
決議後の株主への通知
公開・非公開会社ともに、申込期日の2週間前までに各株主に以下の内容を通知します。株主である引受人に対して申し込み期日までに払い込みをしないと権利を失うことを通知するということで、この通知を失権予告付申込催告といいます。
- 募集事項
- 株主に割り当てられる新株予約権の数
- 申込期日
募集新株予約権者になる日と株主になる日
申込期日後に到来する割当日(割当日は募集事項で決定されています)に効力が発生し、募集新株予約権者になります。
新株予約権が無償の場合は、割当日に新株予約権者になり、新株予約権行使可能期間内に行使の際の払い込みを行えば、行使の日に株主になります。一方、有償の場合は、払込期日を割当日の前後に設定できます。払込期日までに金銭を払い込まなければ募集新株予約権は消滅します。払込期日を設定しなかった場合は、新株予約権行使可能期間開始日の前日までに支払い(この場合も割当日が来れば新株予約権者になります)、その後、新株予約権行使可能期間内に行使の際の払い込みを行えば、その日に株主になれます。
※行使の際の払い込みとは異なり、新株予約権の払い込みは金銭以外でも可能であり、調査も必要ありません。
募集新株予約権における第三者割当
第三者割当における決議機関
- 非公開会社(原則)・・・株主総会特別決議
株主総会特別決議において、取締役(取締役会設置会社にあっては取締役会)に委任することが可能です(委任の内容として、①募集新株予約権の内容及び数の上限、②金銭の払い込みを要しない場合は、その旨、③払い込みを要する場合はその金額の下限等について決定する必要があります)。 - 公開会社(通常)・・・取締役会決議
有利発行する場合は、株主総会特別決議を要します。また、取締役は有利な金額で募集することの説明が必要になります。有利発行する場合においても、株主総会特別決議で取締役(取締役会設置会社にあっては取締役会)に委任することが可能です(委任の内容として、①募集新株予約権の内容及び数の上限、②金銭の払い込みを要しない場合は、その旨、③払い込みを要する場合はその金額の下限等について決定する必要があります)。
※公開会社において第三者割当をする場合は、株主総会ではなく、取締役会で募集事項の決定をします。そのため取締役会決議後、割当日の2週間前までに募集事項について株主へ通知又は公告をする必要があります(理由は募集株式の発行と同じです)。
第三者割当における決定事項
- 募集新株予約権の内容と数(種類株式発行会社においては募集株式の種類および数)
内容については、既発行の株式であれば定款や登記記録にどんな内容なのか記載されていますが、新たに発行する新株予約権については内容がありません。つまり、募集事項決定時にどんな内容にするのかを決めることができます。 - 募集新株予約権の引換えに金銭の払い込みを要しない場合はその旨
- 有償の場合は、新株予約権の払込金額またはその算定方法
- 募集新株予約権を割り当てる日(割当日)
- 募集新株予約権と引き換えにする金銭の払い込み期日
ただし、募集株式の発行とは異なり、払い込み期日を定めなくても良い。その場合は行使期間の初日の前日が払い込み期日となります。
割当て
申込みあるいは総数引受契約があり、申込期日経過後に、割当てが行われます。募集株式の発行と同様、割当自由の原則が働きます。ただし、譲渡制限付株式(新株予約権に付いてる場合と行使後に取得する株式に付いてる場合があります)の場合は株主総会特別決議(取締役会設置会社にあっては取締役会議)で割当者を決定します(定款に別段の定めがあればこの限りではない)。その後に、申込者に対する新株予約権の数の通知を行います(割当結果通知)。
募集新株予約権者になる日と株主になる日
※株主割当と同じです。
申込期日後に到来する割当日(割当日は募集事項で決定されています)に効力が発生し、募集新株予約権者になります。
新株予約権が無償の場合は、割当日に新株予約権者になり、新株予約権行使可能期間内に行使の際の払い込みを行えば、行使の日に株主になります。一方、有償の場合は、払込期日を割当日の前後に設定できます。払込期日までに金銭を払い込まなければ募集新株予約権は消滅します。払込期日を設定しなかった場合は、新株予約権行使可能期間開始日の前日までに支払い(この場合も割当日が来れば新株予約権者になります)、その後、新株予約権行使可能期間内に行使の際の払い込みを行えば、その日に株主になれます。
※行使の際の払い込みとは異なり、新株予約権の払い込みは金銭以外でも可能であり、調査も必要ありません。
新株予約権の譲渡
原則、新株予約権は譲渡可能であり、新株予約権の発行決議において「会社の承認を要する旨」を定めることも可能です。定款に定める必要はありませんが、発行後の変更は不可となります。譲渡制限株式とは異なり、会社が譲渡を承認しない場合の買い取り請求がないことに注意が必要です。
新株予約権の譲渡の効力発生要件
- 証券発行新株予約権・・・新株予約権証券の交付
- 新株予約権証券不発行・・・譲渡又は質入れの意思表示
新株予約権の譲渡の対抗要件
- 新株予約権証券不発行・・・第三者と会社に対する対抗要件は、新株予約権原簿の名義書換
- 記名式新株予約権証券・・・第三者に対する対抗要件は新株予約権証券の占有、会社に対する対抗要件は新株予約権原簿の名義書換
- 無記名式新株予約権証券・・・第三者と会社に対する対抗要件は、新株予約権証券の占有
自己新株予約権の消滅手続き
会社が新株予約権を取得することは可能です。例えば、新株予約権の内容を決める場合、取得条項付新株予約権とする旨を定めれば、一定の事由が発生したときに取得できます。取得した株式を消却するには、取締役会設置会社においては取締役会の決議・非設置会社では取締役の過半数の一致で消却する自己新株予約権の内容と数を決めます。
新株予約権の無償割当と通知
株式無償割当と同様、新株予約権も無償割当が可能です。決議機関は株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会)で、対象となる株式(種類株式発行会社にあっては種類株式)を株主の持ち株比率に応じて無償で割り当てることを決定します。株主からの申込みを必要としないので、スムーズな割当が可能になります。※決議機関は定款に別段の定めがあればこの限りではない。
株主への通知(新株予約権の内容及び数)は、新株予約権無償割当の効力が生じた日後遅滞なく行う必要があります。新株予約権の行使は通知が到達してから2週間であり、もし通知到達後、2週間ない場合は延長されます。
新株予約権の行使
新株予約権を行使する際、通常は会社に対する意思表示のみで、新株予約権証券が発行されている場合はそれを会社に提出する必要があります。新株予約権行使の際は、①行使する新株予約権の内容と数、②新株予約権の行使日について明らかにする必要があります。株主は新株予約権を払い込み(新株予約権も現金その他の財産と同じ位置づけになります)、会社は新株を発行するため、資本の額が増加することに注意が必要です(自己株を割り当てる場合を除きます)。
新株予約権の行使に伴う出資の履行
金銭出資の場合は、株式会社が指定した銀行等の払込取扱場所で全額を振り込みます。金銭以外の場合は、新株予約権の内容において定められた財産を給付します。もし出資した現物の価額が少ない場合、差額相当の金銭を払い込む必要があります。
※新株予約権の行使について、会社は自己新株予約権を行使できない(持つだけならできます)。
新株予約権に関する違法性
違法があった場合の責任の所在やそれに伴う差し止め請求などについては募集株式と同様になります。
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募集株式の発行
募集株式の発行 募集株式の発行とは、株主となる人あるいは既存の株主に引き受けてもらう株式を新たに発行することを言います。株式引受人の募集により、社員と資産(株式引き受けにより会社に出資される)が増加し ...
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