会社法

募集株式の発行

募集株式の発行

募集株式の発行とは、株主となる人あるいは既存の株主に引き受けてもらう株式を新たに発行することを言います。株式引受人の募集により、社員と資産(株式引き受けにより会社に出資される)が増加します。

※1回の募集株式発行につき1種類の株式しか発行できません。

 

募集株式における2つの方法

株主割当

新しい株式を既存の株主に対して、それぞれの持分の比率に応じて株式数を割り当てる方法です。例えば、持ち株比率が株主A:B=4:1のとき、新たに100株の募集株式を発行したとすると、AとBに割り当てられる株式数はそれぞれ80株と20株になります。

 

株主割当における決議機関

  1. 非公開会社・・・株主総会特別決議(定款の定めにより取締役または取締役会決議にすることができます)
    株式を割り当てられても資金不足で購入できないことや、譲渡制限付株式の入手困難さから株主への影響は大きいため、株主総会特別決議を要します。定款に定めれば、取締役の過半数一致または取締役会の決議に変更できます(大きい影響があるとはいえ、資金不足なのは株主の責任でもあるので、定款で決議機関を易しいものに変更可能です)。
  2. 公開会社・・・取締役会決議
    割り当てられた株式を購入できない場合、後で市場から購入することができるため、取締役会の決議になります。
    ※この場合も取締役会決議で決定しますが、第三者割当と異なり、株主の持ち株比率に応じて募集株式の発行を行うため、株主への事前通知を必要としません。

 

株主割当における決定事項

  1. 募集株式の種類と数(種類株式発行会社においては募集株式の種類および数)
  2. 募集株式の払込金額またはその算定方法
  3. 金銭以外の財産(現物出資)を出資の目的とするとは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
  4. 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は現物出資の財産の給付の期日又はその期間
  5. 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項
  6. 株主に対し募集株式の割当を受ける権利を与える旨
  7. 申し込み期日

 

決議後の株主への通知

公開・非公開会社ともに、申込期日の2週間前まで(申し込みするかどうかの判断)に各株主に以下の内容を通知します(202条4項)。株主である引受人に対して申し込み期日までに払い込みをしないと権利を失うことを通知するということで、この通知を失権予告付申込催告といいます。なお、この割り当てを受ける権利の譲渡はできません。

  1. 募集事項
  2. 株主に割り当てられる募集株式の数
  3. 申込期日

※さらにこの通知の後にも203条1項の通知(引受けの申込みをしようとする者に対する募集事項等の通知)をする決まりとなっています。しかし、失権予告付申込催告との違いは、「金銭出資の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所」という事項のみなので、多くの会社はこの事項を失権予告付申込催告の中に加えて通知をしています。

 

 

第三者割当(株主割当以外)

第三者あるいは株主の持ち株比率に関係なく株式を割り当てる方法です。例えば、持ち株比率が株主A(400株):B(100株)=4:1のとき、Bに対してのみ新たに100株の募集株式を発行するというような場合です。この場合、持ち株比率がA:B=2:1となり、Aの持ち株比率が低下することに注意が必要です。

 

第三者割当における決議機関

  1. 非公開会社(原則)・・・株主総会特別決議
    第三者割当された場合、既存の株主の持ち株比率が低下し、さらに譲渡制限株式なので買い足すことが難しい。つまり、既存の株主が不利益を被るため、より厳しい株主総会特別決議を要します。さらに有利発行(他の株主が購入した金額よりも安い価格での発行)の場合、取締役は株主総会特別決議で有利発行することの説明が必要になります。
  2. 非公開会社(委任する場合)・・・1年のうちに数回にわたり募集株式の発行を予定している場合、①株主総会特別決議で募集事項の大枠を決め(1年間にわたり株式数2000株、払込金の下限1万円など)、取締役あるいは取締役会設置会社にあっては取締役会への委任を決定します。②募集株式の発行に伴う詳細な募集事項(株式の種類、数、価格、期日、現物出資かどうか、資本金に関する事項など)を取締役の過半数一致あるいは取締役会決議により決定します。払込期日は決議後1年以内でなければなりません。払込金額の下限が有利である場合、取締役は株主総会特別決議においてその理由を説明する必要があります。
  3. 公開会社(通常)・・・取締役会決議
    公開会社での第三者割当において、株式を割り当てられなかった株主の持ち株比率は低下しますが、公開会社では株式を自由に購入できますので、既存株主へ不利益を与えるということはありません。従って、募集株式の発行について取締役会決議で決定できます。
  4. 公開会社(有利発行)・・・株主総会特別決議
    市場価格よりも安く第三者割当をした場合、他の株主は市場価格で購入しなければならず、不利益を被ります。従って、より厳しい株主総会特別決議を要します。また、取締役は有利な金額で募集することの説明が必要になります。
  5. 公開会社(有利発行、委任する場合)・・・1年のうちに数回にわたり募集株式の発行を予定している場合、①株主総会特別決議で募集事項の大枠を決め(1年間にわたり株式数2000株、払込金の下限1万円など)、取締役会への委任を決定します。②募集株式の発行に伴う詳細な募集事項(株式の種類、数、価格、期日、現物出資かどうか、資本金に関する事項など)を取締役会決議により決定します。払込期日は決議後1年以内でなければなりません。払込金額の下限が有利である場合、取締役は株主総会特別決議においてその理由を説明する必要があります。
  6. 非公開会社において譲渡制限種類株式を発行する場合
    A種、B種、C種、D種類株式を発行している会社において、D種を第三者割当した場合、他のD種株式を持つ株主は会社全体およびD種株式に対する持ち株比率が低下するため、会社への影響力(発言力など)が大きく低下します。そのため、全体の持ち株比率の低下については株主総会特別決議D種類株式内における持ち株比率の低下についてはD種類株主総会特別決議による審議を要します。
  7. 公開会社において譲渡制限種類株式を発行する場合
    A種、B種、C種、D種類株式(D種のみ譲渡制限付株式)を発行している会社において、D種を第三者割当した場合、他のD種株式を持つ株主は会D種株式に対する持ち株比率が低下するため、D種類株式内における持ち株比率の低下についてはD種類株主総会特別決議による審議を要します。
    ※A種、B種、C種の持ち株比率も低下しますが、公開会社では自由に購入することが可能なので、この点の配慮は必要ではありません。

※公開会社において第三者割当をする場合は、株主総会ではなく、取締役会で募集事項の決定をします。そのため取締役会決議後、払込期日(期間の場合はその初日)の2週間前(払込むかどうかの判断、払込期日が来ると効力が発生してしまう)までに募集事項について株主へ通知又は公告をする必要があります。株主は反対なら募集株式の発行について差し止め請求をすることが可能です。ただし、上場会社では募集事項を金融庁に届ける必要があり、金融庁のホームページ(エディネット)に募集事項が掲載されるため、株主への事前通知を必要としません。

 

第三者割当における決定事項

  1. 募集株式の種類と数(種類株式発行会社においては募集株式の種類および数)
  2. 募集株式の払込金額またはその算定方法
  3. 金銭以外の財産(現物出資)を出資の目的とするとは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
  4. 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は現物出資の財産の給付の期日又はその期間
  5. 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項

 

決議後の株主への通知

第三者割当の場合、一般投資家など外部の人に対しホームページなどを通して募集活動をし、引き受けの申込みをしようとする者に対する募集事項等の通知を行います(203条1項)。

  1. 株式会社の商号
  2. 募集事項
  3. 金銭の払込をすべきときは、払込みの取扱い場所
  4. その他法務省令で定める事項

※この通知を受けて株主や一般投資家は株式を申込み(株式申込人)、会社は申込みを受けて株式の割当を行います(割当を受けた人を株式引受人といいます)。申込みに対して会社は承諾をし、申込みをした人に株式の割当を行います(割り当てられた人のことを株式引受人といいます)。

 

第三者割当における募集株式の割当

株式会社は申込者の中から募集株式の割当を受ける者および株式数について自由に決めることができます。これを割当自由の原則といいます。ただし、募集する株式が譲渡制限付株式の場合、この株式を会社にとって不利な人に渡ることを防ぐため、株主総会特別決議あるいは取締役会設置会社では取締役会の決議で審議する必要があります(定款に別段の定めがある場合はこの限りではありません)。その後に、申込者に対する募集株式の数の通知を行います(割当結果通知)。

 

総数引受契約

総数引受契約とは、上記のように申込人を募集してから割当などをするのではなく、発行会社と第三者(銀行など)との間で募集株式の全部を引き受けてもらう旨の契約を締結することです。当然、通知等を省くことができます。ただし譲渡制限付株式において総数引受契約をする場合、株主総会特別決議あるいは取締役会設置会社にあっては取締役会の審議を要します(定款に別段の定めがある場合はこの限りではない)。

※株主割当における募集株式の発行において、申込みがない、あるいは失権したときの株式の再募集は公開・非公開会社共に認められません。

 

現物出資

株式引受人は金銭ではなく現物出資でも支払うことが可能です(現物出資者の資格について制限はありません)。金銭の場合は指定場所(会社が定めた銀行等)にお金を払い込むだけですが、現物出資の場合はその評価が必要になります。会社は募集事項決定の中で現物出資の価格と内容を決定後、すぐに裁判所に対し検査役の選任の申立てをし、検査役に現物出資の財産価格が妥当かどうか調査してもらいます(約1カ月かかります)。検査役は現物出資財産の実際の価格を裁判所に報告し、その価格が不当だと判断された場合、裁判所から変更決定が下されます。

 

検査役の調査を省略できる場合

  1. 割り当てられる(交付される)株式数が少ない
    交付される株式総数が発行済株式総数の10分の1以下
  2. 現物出資財産の価額が少額
    現物出資財産の総額が500万円以下
  3. 市場価格ある有価証券
    出資される有価証券(他社の株式)の価額が市場価格以下
  4. 現物出資財産の価額の相当性について、弁護士等の証明がある場合
    弁護士等とは、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人のことです。現物出資財産が不動産である場合は弁護士等の証明に加え、不動産鑑定士の評価が必要になります。
  5. 現物出資財産が会社に対する金銭債権(弁済期到来済)
    弁済期到来済(債務者が期限の利益を放棄することで弁済期到来済とすることも可)の金銭債権が500万円以下
    ※資本と負債を交換することをDES(デット・エクイティ・スワップ)と言います。

 

出資の履行

引受人は、払込期間内または払込期日までに全額を払い込む必要があります。現物出資者の場合も同じく給付する必要があります。効力発生日(株主になる日)は、期間内における履行日または期日になります。払込みまたは給付できなかった場合は株主となる権利を失います。

 

端数の処理

株主割当の際に出た端数(小数点以下)は切り捨てられます。

 

募集株式の発行の違法性

払込金額の不公正

払込期日または払込期間の初日までに違法性が発見されれば、株主は差止請求(やめることの請求)をすることが可能です。またそれらの期日を過ぎたとしても、①払込金額が著しく不公正(安価など)、②取締役と引受人間における通謀が発覚した場合は、引受人は会社に対し公正な価額を支払う義務を負います。この訴えを会社が行わない場合は、株主が提訴請求や責任追及の訴えを起こすことが可能です(株主代表訴訟)。

 

現物出資財産の価格が評価よりも低い場合

引受人が会社に対し公正な価額を支払う義務を負う場面として、現物出資財産の価格が評価よりも低かった場合もこれにあたります(支払いを求め会社あるいは株主が請求訴訟を提起することができます)。しかし引受人がこのことについて善意無重過失の場合は当該株式の引受けの申込みあるいは総数引受契約を取り消すことが可能です。

価格決定に関与した取締役又は執行役についても、引受人と同様に責任を免れることはできず、不足額を連帯して支払う義務を負います。さらに価額の評価を弁護士等に委託した場合、引受人と取締役に加え、弁護士等も連帯責任を負います。しかし、取締役は①検査役の調査を経た場合、②取締役が注意を怠らなかったことを証明できた場合は義務を免れます。また弁護士等についても過失がないことを証明すれば責任を免れることができます。

 

出資の履行を仮装した場合

募集株式の引受人が金銭の出資や現物出資財産の給付を仮装した場合、全額あるいは現物出資財産(これに相当する金銭)を支払う義務を負います(株主による提訴請求可)。この義務は総株主の同意があれば免除されます。この仮装に関与した取締役もまた金銭を支払う義務を負うが(連帯責任)、注意を怠らなかったことを証明できれば免れます。

 

※このような出資の履行が仮装された募集株式を譲渡された場合、譲受人に悪意または重過失がない限り、当該株式の権利行使は可能です。

 

募集株式の発行等の無効の訴え

無効については会社法で規定されていませんが、以下、裁判事例があります。

  1. 発行可能株式総数を超える発行(枠外発行)
  2. 募集株式発行の際の通知、公告をしていない場合
  3. 募集株式発行等の事前差止の仮処分を無視した発行
  4. 定款に規定のない種類の株式の発行

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